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20歳のお祝いで金庫をもらった

二十歳で起業することになった。仲間は大学時代からの友人二人と、その知り合いの何人か。ちいさな会社を立ち上げて、そこから世界へ打って出るなんてこと、まわりの人間はみんな無理だって言ったけれど、それは自分のまわりというごく一部の世界にすぎないんだと考えていたから、大して気にもしなかった。

わたしの実家は自営業で、父はおそろしいほどのカタブツではあるけれど、不思議なことにわたしの「商売」には理解を示した。もちろん、わたしがどんな仕事をしているのか、明確に理解できているわけではない。そもそも親父はインターネットすら知らないのだから。けれどだからといって、私がしようとしていることを、最初から否定したりしないところは親父の意外な一面だった。共同経営者の友人がわたしの親父を評し「分からないからといって否定しないかわりに、盲目的に肯定することもしない、バランス感覚の優れた人物」と言ったのは、案外的を射ているのかもしれない。これにくらべると、お袋はもう完全否定だったけれど、実際に会社が作り出した利益がどの程度であるか、分かりやすい形でみせたとたんに盲目的な肯定派に鞍替えしたのだから、なんとも現金な話だと思う。

昔ITの風雲児みたいな人が言っていたが、「女は金でなんとでもなる」みたいなのは、ロマンがないけれど真実かもしれない。
そういう意味で、高級外車を見せようが、コンドミニアムに連れて行こうが、芸能人に会わせようが、それがお前のやっていることの本質なのか?という顔をしている親父は、ある意味で大したものだろう。商売人の本質とはそういうものなのかも知れないが。

さて、そんな親父がわたしの二十歳の誕生日にくれたプレゼントがある。業務用の耐火防盗金庫だった。それほど現金や有価証券の現物を扱うわけではないし、そもそもそれを置く事務所も開設していなかったのだけれど、それを契機に青山あたりの物件を探すことにした。